2015年、ワールドニュースにもなったパナマ文書の流出事件。
その全貌についてはいまだ知るところではないが、少なくとも著名人や企業におけるタックスヘイブンの利用が明記されていることは自明の理となった。
タックスヘイブン=悪という認識は果たして合っているのだろうか?
検証していきたいと思う。
その匿名性の高さから、フリーメイソンなどと同じように一種の都市伝説のように語られることすらある「パナマ文書」。
多くの謎に包まれているパナマ文書について、明らかになっている部分をさらっていきたいと思う。
まずは、Wikipediaを確認してみよう。
なるほど、天下のWikipediaでさえお手上げである。
その他、パナマ文書について言及がなされている文献について調べてみると、以下のようなことが解ってきた。
これらのことから推測するに、どうやらパナマ文書には世界のお金に関するありとあらゆる機密情報が書かれているようである。
つまり、パナマ文書とは都市伝説で語られているような摩訶不思議で神秘的な書物というわけではなく、お金にまつわる生々しい情報が書かれているデータブックのことであり、金融市場の秩序を守るために完全匿名という性質を帯びているものである。
しかし、そんなパナマ文書が一度だけ公けにさらされてしまうという流出事件が起きたことがある。
2015年、匿名で南ドイツ新聞社に提供されたものが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に送られたことにより、公にさらされたのである。
政治家や著名人などのタックスヘイブン(脱税だけでなく合法、脱法的な節税を含む)に関する情報がまざまざと記載されていたことがメディアで報道され、その政治家や著名人とは果たして誰なのかという、醜い「犯人探し」が世界中で行われた。
法に触れるような脱税行為は当然看過できるものではない。
しかし、あくまで合法なタックスヘイブンであればなんら問題はないはずである。
特に海外の富裕層はヘッジファンドなどを用いて莫大な資金を投資に回すことで資産形成を行っている。合法である限り、そのようにして得た資産を保持しておきたいと思うのは人間の性である。それを抜きにして「タックスヘイブン」という言葉だけを切り取って揚げ足取りのように犯人捜しを行うことはあまりに建設的ではない。
もしもパナマ文書が流出した際に個人名や企業名まで漏れていたと考えたら、たとえ合法であったとしても世界中のバッシングの的になっていたであろうということは想像に容易いのではないだろうか。
タックスヘイブンを利用することは、特に企業の経営者にとってはもってこいである。なかでも、二重課税を回避することができるというのがかなり大きい。
タックスヘイブンでは、企業の運営において一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される。
それだけでなく、ローカル・スポンサーが不要、資本・利益の本国送金が自由、外国人労働者の無制限雇用など、様々な優遇措置が取られている場合も多く、企業のスタートアップや成長をより効率よく促すためには大変有効な場所なのである。
日本における所得課税の範囲は、日本に居住している場合、日本で発生するすべての所得に対して納税の義務がある。つまり、居住者に対して「全世界所得課税」が行われているということになる。
では、同時にアメリカでも子会社を展開していた場合どうなるか。
アメリカでも全世界所得課税制度が敷かれているため、子会社で稼得した所得はアメリカで法人税を支払わなければならないということになるのだ。これでは、日本とアメリカの両方で税金を支払わなければならない二重課税となってしまう。
二重課税防止のため、外国税額控除制度や租税条約の整備が進められてはいるが、当然ながら租税条約を結んでいない国では依然として二重課税の問題が残る。
そこで、先述のようにタックスヘイブンでは税金が完全免除になる地域も存在するため、この地域に支店を展開すればそもそも二重課税になりうることがないというメリットがある。
なかには、タックスヘイブンを使った悪だくみを考える輩も存在するかもしれない。
そのような不届き物は別個で裁いていけばいいだけである。タックスヘイブンを利用するメリットを知らずに言葉に踊らされるのは、滑稽でしかない。