ヘッジファンドに投資を行う機関投資家とは何者か?

ヘッジファンド 機関投資家

ヘッジファンドの主な顧客は富裕層や機関投資家であるとよくいわれます。

富裕層はわかるのですが、機関投資家とはいったいどのような人のことを指すのでしょうか。

意外と知ってる人は少ないと思います。

機関投資家は個人を指す言葉ではない

機関“投資家”という名称から良く勘違いされがちですが、特定の個人を指す言葉ではありません。

機関投資家を定義づけると、「個人投資家などが納めた莫大な資金を有価証券などで運用・管理する社団や法人」のことになります。

具体的には、保険会社、投資信託、信託銀行、投資顧問会社、年金基金などが機関投資家といわれる団体です。

国内法人だけでなく、外国法人もすべて含みます。また、財団も機関投資家に含まれます。

ある種、ヘッジファンド自体が機関投資家の1類型ともいえます。

機関投資家が市場に与える影響は絶大である

パナマ文書 日本

機関投資家が市場に与える影響はすさまじく、良い方向に働けばよいですが、悪い方向に働いてしまったときの損害は計り知れないものがあります。

かの有名なリーマンショックでさえ、機関投資家が引き起こしたといわれているほどです。

リーマンショック後、機関投資家が市場に関与しすぎることを防ぐために、2015年、いわゆる「ボルカー・ルール」が制定されました。

ボルカー・ルールでは、未公開株やヘッジフぽるかーァンドに対する出資の制限や自己勘定によるリスク資産の売買禁止、レバレッジやデリバティブの大幅な規制などが盛り込まれました。

この新制度によって、機関投資家の投機的行為は大きく制限されることになったのです。

日本版スチュワードシップ・コードの7原則について

さらに日本版スチュワードシップ・コードといって、投資先企業の持続的な成長を促し、顧客の中長期的な投資リターンの拡大を図るために定められた、機関投資家のための7つの原則があります。

その内容は以下のとおりです。

1. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。2. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。

3. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。

4. 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。

5. 機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。

6. 機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。

7. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。

機関投資家とヘッジファンドとの関係性について

関係性 ヘッジファンド

こうして機関投資家への規制がどんどんと厳しくなっていくなかで、ヘッジファンドから出資を引き揚げる機関投資家も現れ始めました。

特に米国最大の年金基金であるカルパースによるヘッジファンドへの出資停止(約40億ドル)は、ヘッジファンド業界に衝撃を与えました。

停止の理由は、相場環境が良好であり、ヘッジファンドに頼らなくてもリターンを獲得できるからだといいます。これを言われてしまっては、ヘッジファンドの存在意義が今後ますます問われていくことになるでしょう。

直接の原因は近年のヘッジファンドの運用リターンの低迷にあるのですが、やはり割高な手数料体系やその他顧客サービスなど改善しなければならない点も山積みであることはヘッジファンド側も重々承知のはずです。

とはいえ、全体としてみれば運用総資産は依然として3兆ドルを維持しているなど、改革に緊急を要するような危機に陥っているというわけではありません。

運用成績の悪さや手数料の高さなど文句はたくさんあるものの、やはり機関投資家のヘッジファンドに対するニーズは相変わらず高いということが理由のひとつです。

一部の大手機関投資家は撤退に踏み切りましたが、ボルカー・ルールによって投機的な取引を禁止されてしまった機関投資家の多くは、それでもまだ資産運用をヘッジファンドに任せていたほうが安定していると考えています。

ヘッジファンドはボルカー・ルール規制の対象外であり、柔軟かつ機動的な運用で相場の好不調に連動せず安定した収益をもたらしてくれます。

そうした背景から、まだ期間投資家によるヘッジファンドへの投資が完全になくなるということはなく、当分はもちつもたれつの関係性を築いていきそうです。